2 顎関節症の分類と診断

2. 顎関節症の分類と診断
お悩みの症状から顎関節症の何型かを自己診断してみてください.顎関節症は直ちに治療が必要です.放っておくと口が開けられなくなり,食生活や社会生活は勿論のこと全身的な随伴症状による悪影響を与えます.

顎関節症1型
Masticatory muscle disorders
咀嚼筋障害
主訴 筋痛 ( 筋緊張,筋スパズム,筋炎 ),顎関節の運動痛,下顎運動障害
下顎運動障害 筋のこわばりや,筋痛による開口制限 数回訓練すると開口量は増大.基本的な下顎運動異常は認められない
随伴症状 頭痛,肩凝り,頸部痛,腰痛,耳症状
精神・心理的な症候 抗鬱,不安傾向
顎関節症2型
Capsule-ligament disorders
精神・心理的な症候
抗鬱,不安傾向関節包・靱帯障害
主訴 顎関節部疼痛 ( 開閉口時の運動痛,咀嚼時痛 ),顎顔面の打撲,むちうち損傷,硬固物の無理な咀嚼,過度な開口などの外傷性,ブラキズムなどの口腔習癖および異常顎運動などの内在性外傷. 関節包,外側靱帯,関節後部結合組織および滑膜に外力による組織の過度の伸展,圧縮およびねじれによる.
外来性外傷 ; 顎顔面の外傷,むちうち損傷,過度な開口. 内在性外傷 ; 硬固物の無理な咀嚼,口腔習癖( ブラキズム )
顎関節症3型
Disc disorders
関節円板障害
主訴 関節円板の転位 ( 前方転位92%,側方転位6%,後方転位3% )
(1) 3a型
(関節円板の復位をともなう)なんとか口は開く
開口相 : 初期 : 下顎頭が回転運動から滑走運動に移行しはじめる際,転位した関節円板後方肥厚 部をくぐり抜けることによりクリックとなり,その後,正常な円板と下顎頭の関 係となる. 中期と末期 : 関節円板の転位がより進行しているため,下顎頭が関節結節を超えなければ ( 大きく開口 ) 円板と下顎頭の関係は正常に復くしない. 閉口相 : 末期のクリックが多いが,既存の咬頭嵌合位に戻る少し手前の位置で再び前方に転位.
(2) 3b型
(関節円板の復位はない: クローズドロック)口は片側で21mm,両側で11mmしか開かない
急性クローズドロック 相反性クリックの症状を既往に有し,突然開口量が20~30mm程度に制限. 内視鏡では滑膜部が発赤し,急性滑膜炎を呈する.
慢性クローズドロック 開口量が35~45mm程度,最大開口時のみ患側へ偏位. 慢性クローズドロックと2型は極めて類似
顎関節症4型
Degenerative joint disease, Osteoarthritis
変型性関節症
主訴 関節痛 ( 運動痛,圧痛 ),開口障害 ( 下顎頭の運動障害), 関節雑音( Crepitus, Click, 可触性雑音 ) のいずれか
画像診断 MRIなどが必要 下顎頭辺縁の不透過性の骨造生像,関節面の骨皮質の不整な吸収性骨変化, 下顎頭の吸収性の変化にともなう縮小化
その他 心身医学的,顎関節症の疾患概念にあてはまり,分類1~4型に該当しない 身体表現性障害の概念 : 身体的になにか障害があると思わせるような身体症状がみられるが,症状を説明できるだけの器質的所見が認められず,生理学的メカニズムも不明で,むしろ心理的要因ないし葛藤に由来することが考えられる.また症状は随意的に生みだしたり,消したりできない点で虚偽性障害ないし詐病とは異なります.

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