口腔インプラント治療

1度失った歯は,2度とはえてきません.後は入れ歯かブリッジの治療しかありません.インプラントは顎の骨の中に埋め込むことで自分の歯と同じような感覚がしますが,天然歯にある歯根膜はありませんので,骨とくっついて(オステオインテグレーション)いるだけです,あくまでも人工歯根です.大事に使う為にも,主治医の説明を守ってください.

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1. 口腔インプラントとは

失った歯の人工代用材料(人工歯根)です.

インプラント体のチタン(Ti)は顎の骨と光学顕微鏡レベルで接合しています.この接合状態をオステオインテグレーションと呼びます.しかし,電子顕微鏡(TEM)ではTiと骨との間に薄い組織が介在しています.通常異物であれば1~3mm位の線維性結合組織が介在するのですが,オステオインテグレーショではその100万分の1の薄さで,チタン特有の効果と言えるでしょう.また,インプラント体の表面をハイドロキシアパタイト(HAもしくはβーTCP)でコーティングしているものは骨と約100%接合しています.
インプラントは歯根と同様に顎の骨に埋め込みますので,義歯のように取り外しをしなくてよいこと,咬む力をインプラントで支えることができることで周りの歯に負担をかけないことが最大の利点です.このため,インプラントは第三の歯とか自分の歯同様と言われる先生がいますが,結晶構造も異なりますし,歯根膜もありませんからインプラントはあくまで人工歯根です.
注意) 使い方次第では歯周病と同じように抜け落ちる場合もありますので,歯周病の予防同様に固い食べものを避け,お菓子やジュース等の砂糖の制御してブラッシングを充分おこなってください.

  

【写真左】顎の骨に埋め込みます 【写真中央】インプラントと周囲骨 【写真右】インプラント治療が最も周りの歯を長持ちさせることができます

 

歯がなくなってブリッジ等にするとそれを支える歯の根っこに過剰な負担がかかり,歯の寿命を短くします.
歯が喪失した部分にはインプラントを入れることで咬む力をインプラントにも分散し,自分の歯は過剰な力が加わることを分散します(左).
結果的に日宇歯科・矯正歯科の調査では普通の治療をした後,定期検診に来ないで痛い時だけ来る人が歯は最もなくし,次に定期検診にきている群,インプラントを入れて咬み合わせを回復した群が経年的な歯の喪失数は最も少なかったのです.(右)


1) インプラントの歴史

インプラントの考え方はヒポクラテスの時代からありました.しかし,当時はチタンの加工技術ができなかったので鉄,金などを顎の骨に埋め込んでいたようです.これでは直ぐに抜け落ちてしまいます.
1940年代にサブペリオールスティール・インプラント(骨膜下インプラント)が開発されました.しかし,この手法は難しく一般の歯科医師には普及しませんでした.その手法は顎の骨に被いかぶさる歯肉を剥離して顎の骨の型を印象して,それを基にインプラントのフレームを作製し,歯ぐきを再び開いて作製したフレームを入れ込んで縫合し,歯ぐきが治癒した後に義歯をいれる,いわば義歯を安定させるための補助でした.(インプラントを学んだ1981年当初「骨膜下インプラントの術式ができて,10年以上患者さんの口腔でインプラントが機能して,はじめてインプラントを語れる / 一人前」と学んだことを思い出します)
1960年代に入り,工学が進み,それまでバイタリウムであった材質がTi4AlVに代わったことでより骨と接合するブレードインプラントが開発され,顎の骨の中に埋め込む手法が主流になり,それに応じて骨の形に合うような色々なインプラントの形が開発されました.
1980年代に今の歯根型インプラントが開発され,材質も Ti-4Al-Vから純チタン(Ti)にちかいもの,合成サファイヤ,形状記憶合金,アルミナ,アパタイトなどが開発され,表面もプラズマコーティング,研磨,TPS処理,酸処理され,インプラント体にネジ山を付けるようになり,多種多様のインプラントが出ては消え,消えては出てというように一大産業(国内でも50社以上)となりました.
この頃から大学や実験所で本格的なインプラントの動物実験やデザインコンセプトをおこないはじめました.

顎の骨が小さくどうしても骨の密度と量を造れない場合はサブペリオールインプラント(骨膜下インプラント)も有効ですが,とても難しい手術の一種です.

骨量の分類(インプラント診断で確認してください)
顎の骨は大きさと骨梁(骨の密度)が人により異なりD2が正常です.しかし,歯周病で歯が抜けたところや歯がなくなって長く経ったり,骨粗鬆症などが進むと,顎の骨は密度が低くカスカスになったり,量が小さくなったりします(D3~D4).D4のように小さくカスカスになった骨は,新しく骨の密度を高めることに加えて骨の高さや厚みを造る再建手術が必要な場合があります.

1990年代にTi表面にハイドロキシアパタイトをコーティングしたHAインプラント,インプラント体の表面をHAブラストしたものなどが開発されました.日本に本格的にインプラントが導入されたのはこの頃です.現在,我々の実験ではTi表面にスクエァやリバーススクリューをつけ,表面は1μm程度のオワンをひっくり返したような形が並んでいるブラスト処理(ワイヤー放電加工もあります)で表面加工されているものが理想的です.表面加工についてはニューヨーク大歯学部と共同実験をおこないましたが結果も有為差はありませんでした.しかし,素材については多くの研究がされていますが,生体適合性と硬度の問題から,新素材が開発されるまで基本金属はTiです.
ですので,患者さんの骨密度に合わせたインプラント表面構造,大きさ,長さ,スクリューピツチを選択して埋入するのが最良の方法と言えるでしょう.

その患者さんの骨密度にあったインプラントを入れて,オステオインテグレーション(骨との接合)を得ることが重要です

インディアナ大学教授よりミッシュインプラント研究所講師としての資格授与(1997年)


2) インプラントの利点

(1) 取り外しをしなくてもよい (義歯は取り外ずさなければならない).
(2) インプラント自体で咬む力を分散する
(3) 周りの歯を長持ちさせる
歯がなくなると咬み合わせる力が他の歯に分散して過剰な力が加わり歯の寿命を短くするが,インプラントはそれ自体が咬む力を分散できるので他の歯には過剰な力が加わらない.
(4) 見た目が義歯やブリッジより自然な感じがする.


3) インプラントの禁忌

(1) チタンアレルギーの人には禁忌(極めてマレです)
(2) 過剰な咬合力はインプラント周囲の顎の骨が吸収し,歯周病と同じことになります.あまり硬いものばかり食べているとインプラント周囲の骨が耐えきれなくて吸収し,インプラントは抜け落ちます.
(3) インプラントも歯周病と同様にインプラント周囲炎となる(ブラッシングや砂糖の制限が必要です)
(4) インプラント治療歯に爪楊枝を使う癖のある人はすぐにインプラント歯周炎になりますので要注意です.爪楊枝を使う癖のある人はインプラントはやめましょう(爪楊枝を使う癖を止めれる人はインプラントは入れられます).
(5) メタボリックシンドロームや生活習慣病の方は注意です.これらが悪化している人は体調が改善するまでインプラントはやめましょう.
注意) あくまでも人工歯根ですので「夢の第三の歯」ではありません.大事に使いましょう.

(6) インプラントが成功するか否かの検査は様々な検査(オルソパノラマ,CT,診断用模型,問診,視診,触診や血圧,血液検査)をおこなっても,確定診断することは2006年現在でも,不十分であると考えます.特にインプラント成功のための血液検査のパラメーターは確定されていませんので,定期検査を忘れないでください.ですので,定期検査にこない人はインプラントは止めた方がいいでしょう.
さらに,太りすぎたり,血管が細すぎて血液採取をできない方が過去に1人だけおられましたので,診断が不明なこととインプラントを入れても,失敗するリスクが大きいので,お叱りを受けようが,中止することがかえってよいと思います.

注意)いろいろな診査をしてもインプラントの成功に不安がある方は検査の段階で迷わずに中止しますので,「折角,何回も診査したのに」と考えられる方は当医院でのインプラントはご遠慮ください.


4) インプラントの検査と手術は

インプラントの手術は通常は局所麻酔で十分です.でも,不安や恐怖心がある人は静脈内麻酔を使います.術前に顎の骨の状態のX線もしくはCT検査,インプラントの適合検査,現在の病気の有無と将来の病気にかかるか否かの検査(血液検査),心電図をおこないます.7~14日後に検査結果からインプラントの可否を診断します.
(1) 手術時間
・顎の骨が正常の状態で1~3本までは15分位です(麻酔と管理を含めて1時間位).
・顎の骨が不十分な場合は,最初に顎の骨を造ります.3~4ヶ月後にインプラントを入れます.
・サイナスリフト(上顎洞底粘膜挙上術)は45分位です(麻酔と管理を含めて2時間位).
(2) 入院は必要ありません.但し,腰骨や肋骨を移植する場合は1~2日の入院が必要です.
(3) 恐怖心がある人は静脈内鎮静法を使います.

 


5) 日宇歯科で使用するインプラントの種類(骨量により使い分けします)

(1) チタンインプラント・・・IAT,マエステロインプラント,3i インプラント,ITI,
(2) HAコーティングインプラント・・・マエステロインプラント,
(3) HA-TCPブラストインプラント・・マイティス


6) 日宇歯科でのインプラント上部構造物装着までの期間

インプラント埋入,抜糸後は下記の期間来院する必要はありません.その間,くれぐれも舌や指でインプラント部分を触らないでください.
(1) 骨量(骨密度)がD2の場合 : 約3ヶ月半
(2) 骨量(骨密度)がD3の場合 : 約4ヶ月半
(3) 骨量(骨密度)がD4の場合 : 約4ヶ月半
(4) 骨の造成手術をおこなってインプラントを埋入した場合 : 骨造成に約4ヶ月,インプラント埋入後3ヶ月半

注意) 骨の幅がないときのスプリットクレフト,ボーンエクスパンジョンと骨の高さが不足のときのオンレーグラフトなどと同時にインプラントを埋入する先生,ならびに抜歯と同時にインプラントを埋入する先生がいます.この方保は最先端の方法ではありません.確かに20~30年ほど前にも報告されていた方法ですが,その予後の悪さからこれらの方法は消えていきました.ここ2~3年,新しいインプラントと骨を造る材料の開発により成功率があがり,以前のような方法をおこなって良好な成績を得たと報告している先生もいます.
しかし,その報告には1~3年くらいのケースが多いことと我々の動物実験ではあまり良い結果はでていませんので,日宇歯科では極力そのような方法はサイナスリフト以外はおこなわず,基本に則った術式をおこないます.
サイナスリフトは閉ざされた空間に骨を造りますし,日宇歯科では1991年より100症例ほどおこない,失敗例は1症例のみです.その症例も,3ヵ月後にインプラントを無償で再埋入して良好な予後を得ています.

骨量の分類参照


7) 日宇歯科・矯正歯科のインプラントの費用

インプラントは骨造成も含めて全て自費診療になります.
(1) チタンインプラントもHAコーティングインプラントもアバツトメントを含めて 1本15万円です.
(2) 上部構造物は 5~13万円(冠の種類によります)です.合計で約20~22万円です.
(3) 骨造成費用は部分的には3~4万円,サイナスリフトは20万円~ (骨造成の広さと骨置換材料によります)
(4) 腰骨の採取・移植や骨細胞の培養などの組織工学は20万円~

※ お電話(Tel 0956-33-5821)でご予約をとられてご相談ください.


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